感染症ってなに?

感染症とは 獣医
うとう
うとう

ブログ管理人の うとう です!
感染症は大昔から、人類を悩ませてきたと思います。

ケイちゃん
ケイ
ちゃん

感染症って、人から人にうつる病気のこと?

ヒトのお医者さんだけじゃなくて、獣医さんも関係してるの?

うとう
うとう

からだけではなくて、人以外の動物環境食べ物からうつる感染症があるから、人以外の動物のことも切って離せない問題なんだ。だから必然的に獣医さんも関わってくるよ。

このページでは、感染症の基本的な意味と、感染症が成立する条件について、自分の復習も兼ねて解説します。獣医学の視点から、人や動物の感染症の例も少し載せました。以下、「動物」という言葉には人も含めて説明しています。

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1. 感染症ってなに?伝染病と違うの?

1-1. 感染症と伝染病の違い

感染症

「病原体となる微生物が、動物の体内に入り、増殖し、発病する」という病気のこと。
必ずしも、動物から動物へうつる病気だけではないので、伝染病ではない感染症もある。

伝染病

動物から動物へうつり、発病する病気のこと。
すべての伝染病は、感染症である。

1-2. 宿主と病原体の関係

動物に、病原体である微生物(細菌やウイルス)が感染するとき、動物は宿主病原体微生物は寄生体という関係になります。

2種類の異なる生物のあいだで互いに作用することによって感染が起こります。お互いに利益を得ている場合は「共生」寄生体が一方的に利益を得ている場合は「寄生」といいます。感染症の多くが寄生にあたります

宿主にとって寄生体は、病気や死をもたらす障害となる存在です。一方、寄生体にとって宿主の体内は、安定していて栄養もありとても生きやすい場所です。変化が大きくて厳しい外部環境よりもはるかに良い住みかなので、どうにかして宿主体内に住みつこうとします。

地球上の生命が進化する中で、宿主は免疫機能などの様々な防御・攻撃方法を発達させて寄生体を排除しようとし、寄生体はそれをすり抜ける方法を発達させます。すると、以下のように決着したりしなかったりします。

①宿主が死亡する。しかし寄生体も、他の宿主へ感染しなければ死滅する。
②寄生体が完全排除される。
③宿主と寄生体が共生関係を保つ。
宿主と寄生体が、終わりなき攻防・回避を続ける。いたちごっこ。

2. 強い病原体は、なぜ出てくるの?

うとう
うとう

病原体の遺伝子は、宿主よりもとても短い時間で変異が起こるからです。

病原体が変異することで、以前よりも宿主に大きな障害(重症化、死亡率の増加)をもたらす場合、宿主にとっては強い病原体(強毒、高病原性)へ変異したということになります。

生物は、遺伝子をコピー(複製)して子孫へと引き継ぎますが、その時にごくまれに間違いが生じます。それを遺伝子の変異と言います。変異が、生物が生き残るのに適していたり以前よりも優れていれば、その変異を持つ子孫の割合が大きくなっていきます。これを自然淘汰による進化といいますが、何代も世代を重ねて起こるものなので動物では何千年何万年と時間がかかります。

でも、病原体となる微生物(細菌など)では数日~数年という非常に短い時間で変異が起こります。微生物は数分~数時間で世代交代するため、ぐうぜん変異が起こるまでの時間が宿主の動物よりもはるかに短いのです。そのため、宿主動物の免疫が間に合わない速さで、強い病原体が出現するチャンスが多いのです。

病原体の変異が(宿主にとって)強い場合も弱い場合も、どちらもあります。その病原体が生き残るかどうかは、宿主から宿主へ感染しやすいかどうかにかかっています。

2-1. 強い病原体が生き残る例

宿主動物から他の動物へ病原体がうつりやすい状態の時、強い病原体が生き残ります。

速く多く増殖する変異体に感染すると、宿主に起こす症状は速く重くなる、と考えられます。数が多いとそれだけたくさんの病原体が症状を起こすからです。
速く大量に増える重症化させる(強い) といえます。

感染している宿主動物が重症で動けなくても、付近に他の動物がいるような環境ではすぐに感染が起こります。またその場合、色んな変異体がいる中でも、圧倒的に数が多い変異体(=早く大量に増える変異体)がうつる割合が高くなるのが当然です。

高密度の集団・多頭飼育動物(人)が多く集まる施設などでは、強い病原体が生き残りやすいです。また、注射器の使いまわしなど短時間に感染が広がる条件がある場合もそうです。

2-2. 弱い病原体が生き残る例

宿主動物から他の動物へ病原体がうつりにくい状態の時、弱い病原体が生き残ります。

重症化させる(強い)変異体に感染すると、重症であるほど宿主は動けません。付近に他の動物がいない、あるいは他の動物から部屋・建物などで遮断されている環境では、強い変異体は他の動物へうつる機会がないまま死滅する可能性が高いです。(宿主の死亡か、宿主からの排除)

一方、症状の軽い(弱い)変異体に感染した宿主動物は、動き回れるため、離れた所にいる他の動物と接触することができます。

以上のことから、単頭飼育動物(人)が各々単独で隔離されて交流が少ない集団では弱い病原体が生き残りやすいです。

3. 感染症が成立する3つの条件

病原体である細菌やウイルスが動物の体の中に侵入し、体内のどこかの組織内で増殖して、宿主に生理機能の障害を引き起こすか、または形態の変化を引き起こした状態になることを、「感染が成立した」といいます。

感染症成立の3条件

・感染源
・感染経路
・感受性のある宿主

上記の3つの条件がすべてそろった時、感染症が成立します。

それぞれ、具体的にみていきましょう。

2-1. 感染源

感染源となりうるもの。土壌、動物、など

病原体を持ち、感受性動物への直接の感染を可能とする媒体のことで、生物・非生物どちらもありえます。病原体をまき散らし感染のもととなります。感染源から感受性のある動物へ感染が成立するかどうかは、病原体の強さや量(数)によります。

感染源となるもの

①感染した動物
②汚染された食物
③感染巣(レゼルボア)
④外部の媒体

2-1-感染源①. 感染した動物

病原体は感染した動物から直接、もしくは分泌物(唾液・鼻汁など)、排せつ物(糞便など)とともに排出されて、他の動物へうつります。

病気の症状が出ることを「発症」といいますが、感染が成立しても発症するとは限りません。問題になるのが、キャリアーという存在です。

感染してるが「発症」していない(病原体を持っているけど外観は健康)、なおかつ病原体を排出している動物のことをキャリアーと言います。

発症していない健康なキャリアー(不顕性感染)
発症前の潜伏期のキャリアー
発症後の回復期のキャリアー

などがあります。キャリアー自身も周りの人(動物)も、見ために病気かどうかわからず病気の発見が遅れることや、動き回れるため病原体をまき散らしてしまうことから、発症動物よりもキャリアーの存在の方が、感染を広げる危険性が高いのです。

うとう
うとう

皆さんがインフルエンザにかかった時、熱が下がってもキャリアーとしてまだウイルスを持っていて、排出しており、他の人に感染させる可能性があります。

そのため、発症時から1週間程度は会社や学校を休まなければいけないんです。

ケイちゃん
ケイちゃん

ちなみに…学校保健安全法施行規則でインフルエンザの出席停止期間の基準は「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで」となってるよ。
会社員の場合は、会社の規則によるので、会社と相談してね。

2-1-感染源②. 汚染された食物

発症動物・キャリアー動物から生産された畜産物は、病原体に汚染された畜産物となります。

鶏卵、ハム・ソーセージを含む肉、牛乳、肉骨粉、受精卵などがあります。

うとう
うとう

例えば肉骨粉では牛海綿状脳症(いわゆる狂牛病)、鶏肉や豚肉からサルモネラ症に感染したりします。

2-1-感染源③. 感染巣(レゼルボア)

感染巣レゼルボア、リザーバー reservoir)とは、病原体が維持され、生活・増殖し、感受性のある動物へうつる状態になっている場所のことです。病原体が自然界で存続するための本来のすみかを意味しています。感染巣となりうるのは、生物、土壌、有機物などがあります。

感染源は、病原体を保有し、感受性動物への直接の感染を可能とする媒体のことで、生物・非生物どちらもありえます。

多くの場合は感染巣=感染源となりますが、感染源と感受性動物の間に媒介昆虫・中間宿主などを介する場合などは感染巣感染源になりません(そのばあい媒介昆虫・中間宿主が感染源となります)。

2-1-感染源④. 外部の媒体

土壌、牧草地、家畜舎、鶏舎、車両、水、風、野生動物など、さまざまな外部環境が感染源となる可能性があります。感染動物の排泄物や汚染畜産物により汚染されることによります。

多くの場合は病原体にとって本来の存続できる環境ではないため、死滅したりして感染源とならないですが、病原菌やウイルスによっては長時間存続できるものがあり、感染源となります。

例えば炭素、破傷風、気腫疽、悪性水腫の原因菌は、芽胞という形で土壌中で長期間生存できます。また、病原体がエアロゾル(気体の中に微粒子が多数浮かんだ物質)の状態で風によって運ばれるものに口蹄疫ウイルスなどがあります。

うとう
うとう

ボツリヌス菌も、水中や土など外部環境で芽胞を作って存在する細菌で、長期保存される食品やハチミツ(1歳未満の人に与えた場合)による食中毒「ボツリヌス症」の原因となります。

(参考リンク)
消費者庁 ハチミツによる乳児のボツリヌス症
農林水産省 「食中毒をおこす細菌・ウイルス・寄生虫図鑑」のボツリヌス菌

2-2. 感染経路

感染経路の例:蚊

病原体が、感染源から他の動物へうつっていく経路を、感染経路または伝播経路と言います。経路には主に以下の5つがあります。

感染経路となるもの

①接触
②空気
③食物や飲料水
④ベクター(主に節足動物)
⑤垂直感染(親から子への感染)

※「垂直感染」に対して「水平感染」という言葉があります。これは、動物と動物のあいだで接触して感染するものをいいます。①の直接接触や、①~④の間接接触はどれも水平感染とも言えます。

2-2-経路①. 接触

以下のような例があります。

感染動物との直接接触によるもの
・皮膚・粘膜への接触
・交尾・性交
・乳汁を介して
・咬まれて

感染動物との間接接触によるもの
・感染動物から生産された汚染食物を介して
・感染動物と接触した、健康な動物の体・皮膚・衣服を介して
・感染動物と接触した、車両・食物の容器などを介して

2-2-経路②. 空気

呼吸器感染症に多いものです。感染動物からの唾液・鼻汁が咳やくしゃみで、あるいは尿・乳汁(・乾燥した糞便など)が飛び散った時に、飛沫やエアロゾルとして空中に拡散されます。

うとう
うとう

たとえば牛の病気である口蹄疫のウイルスは、鼻汁から排出されて、エアロゾルとして数十kmも遠くへ運ばれます。

ケイちゃん
ケイちゃん

人からうつる風邪もそうだけど、動物が関わる例では「オウム病」というのがあるんだって。飼っているインコやオウムのフンが乾燥したものを人が吸い込んで感染するみたい。

(参考リンク)
農林水産省 口蹄疫について知りたい方へ
NIID 国立感染症研究所 オウム病(psittacosis )とは

2-2-経路③. 食物、飲用水

食物、エサ、飲用水が病原体に汚染されている場合です。人の食中毒は、食物による感染にあたります。(食中毒はキノコ・植物・魚介類に含まれる自然毒による、微生物の感染とは異なるものもあります)

2-2-経路④. ベクター

感染動物から他の動物にうつる時に、あいだに媒介者として別な動物(特に節足動物)が関わって起こるものがあります 。この時、この媒介者ベクターといい、多くは昆虫や節足動物です。人と動物が関わるものでは蚊・ヌカカ・ダニ・ツェツェバエなどがあり、吸血や体液を吸うものが多いです。

生物学的伝播」:病原体がベクター体内で増殖し、吸血時などにうつる
「機械的伝播」:病原体がベクター体内で増殖せず、吸血時にベクターの口吻に機械的に付着し、ベクターが別な動物を吸血するときにうつる

うとう
うとう

人類に重症で大きな被害をもたらしている感染症には、マラリア病トリパノソーマ病などベクターを介するものも多いです。

2-2-経路⑤. 垂直感染

病原体が親から子へと直接うつる感染経路です。胎子の死産・流産が起こることもあれば、正常に生まれるが病原体をもっている場合、通常の病気の症状がでる場合など、さまざまです。以下のような例があります。

・染色体に組み込まれて
・胎盤から胎子へ
・出産時に産道を介して
・卵を介して(鶏の介卵感染。殻の形成前に卵内へ侵入する場合と、殻の形成後に侵入する場合がある。)
・乳汁を介して(広い意味での垂直感染)

2-3. 宿主の感受性

宿主の感受性の例:健康状態

宿主となる動物側の、病原体に対する感受性は、個体ごとに異なっています。また、同じ個体でもさまざまな要因で体調に変動があるので、感受性は変わってきます。このため、病原体が宿主動物に侵入しても毎回・すべての宿主で同じように感染し、発症するとは限りません

宿主となる動物の体調変化や、感染防御機能の低下を及ぼす要因
・ストレス
・栄養不良
・運動、疲労
・放射線治療
・臓器移植
・悪性腫瘍(がん)
・白血病

宿主動物がもつ、感受性や発症度合いに影響する要因
・年齢
・肉体の性別
・遺伝的要因(品種など)
・ワクチン接種や過去の感染歴などによる、免疫状態


言葉の説明が多くなりましたが感染症について少しでも理解が進みましたら、幸いです。

また、感染症とひとくちに言っても、様々なパターンで感染するということがわかると思います。

それでも基本的に健康でいられるのは体の免疫機構のおかげですが、別種の動物どうしが接触するときは、同種どうしよりも不慣れで危険な病気をお互いにうつしてしまう可能性があります。

うとう
うとう

自身の健康に気を付けるだけでなく、むやみに人以外の動物と過剰なスキンシップをとることはいくら好きであっても避けてくださいね。

参考文献

鹿江雅光・ほか編(1998)『最新家畜微生物学』朝倉書店.
小沼操・ほか編(2006)『動物の感染症<第二版>』近代出版.
新獣医学辞典編集委員会編(2008)『新獣医学辞典』緑書房.

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